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教会誌「こころ」巻頭言
Kokoro
2017年 11月 5日(日曜日)

「カトリックスカウトの日」合同集会

教会誌「こころ」2017年11月号より

 

主任司祭 パウロ三木 稲川圭三

 

ちょっと時期が遡りますが、9月23日(土)に麻布教会で「カトリックスカウトの日」合同集会が行われました。これは、麻布、渋谷、成城、瀬田、田園調布、大森で活動するボーイスカウト、ガールスカウトが年に一回集まって一緒に一日を過ごすという催しです。会場は持ち回りで、確かわたくしが着任した2012年にも、麻布で行われた記憶があります。集会の内容は、会場ごとの特長を生かしながら、ある程度自由に決められていきます。わたくしは3年程前に、司教様から「東京地区のカトリックボーイスカウトの担当司祭をするように」と任命を受けましたので、それ以来、ボーイスカウトの行事には企画の段階から関わらせていただくことになりました。今回の会場の麻布は、決して広いとは言えない構内に200名近い人が集まることになるので、どうやって楽しく有意義な時を過ごせるのかを考えました。

今回のテーマは「考えてみよう、困っている友だちのことを」というものでしたので、各団から一つずつ小さな企画を持ち寄ってブースを作ってもらい、スカウトたちがスタンプラリー形式でその企画を回っていくというスタイルにしました。リーダーたちは8時半頃には集合して、テントを張ったり、机を移動したりしながら、それぞれのブースを形成していました。聖堂、園庭、みこころ会館すべてをフルに使って集会の会場を作り上げていました。スカウトたちは10時に集合し、10時半から、まず全員でカトリックスカウトの日のミサを行いました。福音はマタイの福音書から「種を蒔く人のたとえ」が読まれました。わたくしはすべての人の中に、イエスさまはご自分のいのちを蒔かれたのだと話しました。信者でないスカウトの方が圧倒的に多いのですが、一人ひとりの中に神さまが共におられ、復活のキリストがそこに共にいてくださることを見て、ミサをお捧げしました。ミサ後、聖堂から外に出ると嬉しいことに予報に反して雨があがり、薄日も射してきました。スカウトたちは説明を受けてから、スタンプラリーのチケットを持って思い思いのブースに移動していきました。わたしもスカウトたちに紛れて、ブースを回ってみました。

まず初めに行ったのは生活の中で目にするさまざまな「マーク」について考えさせるブースでした。高校生のスカウトが、何十種類ものマークを見せて、「意味がわかる?」と尋ねていました。よく知っているものもあれば、見たこともないマークもありました。そして例えば、温泉マークなどは、日本人にはわかるけれど、外国人には分かりにくいのだと説明していました。それをどのように表記すれば、わかりやすくなるのかなど、違う立場の人のことを考えさせるブースでした。次のブースは手話の指文字(手話では五十音を指文字で表すことができます)で、自分の名前を表すという内容でした。参加者に五十音の指文字表が配られ、リーダースカウトの前で「わたしの名前は○○です」と指文字を使って名前を伝えると、スタンプを押してもらえるというものでした。

次のブースは二人組になって参加する内容でした。箱の中に何かが入っていて、一人が上の穴から手を入れて触り、それをもう一人に言葉を使わず、身振り手振りで伝えるというものでした。わたしが箱に手を入れると入っていたのは丸ごとのパイナップルでした。組みになっていた哲平君に伝えようとするのですが、とても難しかった。わたしは缶詰の「中央に穴の空いた輪型のパイナップル」で説明しようとしたのですが、「バウムクーヘン?」と言われ、考えてみたら(最近の若い子は缶詰の輪型のパイナップルなど食べたことがないのかも)、と思ったりもしました。

お隣のブースは視覚制限のゲームでした。参加者は目隠しをして、新聞紙を丸めた棒を持ちます。リーダーは上に紙風船が付けられたヘルメットをかぶり、鈴を鳴らします。リーダーはあちこち場所を移動しますが、音を頼りに棒を降り下ろして、上手に紙風船が割れたら成功でスタンプがもらえる、という楽しい遊びでした。

みこころ会館の二階では、部屋を暗くして、中にいろいろな障害物を置き、参加者は更に目隠しをして、ロープだけを頼りにして、そのなかを通っていくというアトラクションが作られていました。

そのお隣は、唯一食べ物の出し物。「なんちゃってコロッケ」というものを作るブースでした。災害時に火も油も使わずに作れるというもので、小さい子どもでもあっと言う間に出来ました。まず、ビニール袋が配られ、そこにマッシュポテトの素を入れ、牛肉?の振りかけを一振り、お好みでカレー粉をいれ、キャップ一杯の水を入れて、手でよく揉んで丸め、最後にチップスター(ポテトチップス)を砕いた粉を纏わせて出来上がり。5分もかからずに出来て、食べてみると、確かにコロッケのような味(!)になっていました。子どもたちはとても喜んでいました。

さて、主催地団である麻布・港5団は、聖堂の中でしっかりとした企画を行っていました。企画の内容は今年の夏、カトリック平和旬間(8/6〜15)の行事として目黒教会で行われた、石井光太さんの講演からのインスピレーションによるものです。聖堂内の企画は二段構えでした。まず後の方の席で、スカウトの保護者の方たちが、平和行事で使われた石井光太さんの写真集、『みんなのチャンス〜ぼくと路上の4億人のこどもたち』の読み聞かせをしてくださいました。これは絶対的な貧困の中で生きるこどもたちの生活を紹介する写真集です。読み聞かせの後、次に奥で中高生スカウトたちによる劇が演じられました。内容は、3・11の震災後にあった実話です。平和行事の日、石井光太さんの講演を聞いて、質問の時間に一人の女子学生が立ち上が り、「わたしたちは一体何をしたらよいのでしょうか」と言ったのです。それに対して石井さんは、「若い人が『これをしたい』と思ったら、それをしたらよい。現実に対して『こうしてあげたい』という直感は絶対に正しい。理屈ではいくらでもそれに反論できる。でも、直感には勝てない。それをやったらよい」と話されました。そして、その実例として話してくれた話が劇になったのです。

東日本大震災の後、一人の女子生徒が「自分も何かしたい」と思い、自分ができる手芸を生かして、100体のお地蔵さんを作ったのだそうです。そしてそれを被災地のお寺に送った。大人の理屈で考えれば、ちょっと迷惑な話かもしれません。しかし、お寺の住職さんはせっかくだからと、そのお地蔵さんを行方不明者の慰霊の壇に並べておいたのだそうです。すると、お祈りに来た家族が、「このお地蔵さんはどこか娘に似ている・・・」「お母さんに似ている・・・」 と言って、住職さんに「貰って行ってもよいか」と尋ねたのだそうです。住職さんは「どうぞ、どうぞ」と、希望する方にはお地蔵さんを持たせました。すると、二ヶ月もしないうちに、100体のお地蔵さんは、一体残らずいろいろな人に引き取られて行ったのだそうです。

わたくしはこの話を聞いた時、涙が止まりませんでした。そんな実話がスカウトたちによって劇になっていました。石井さんのお話からのスピンオフ(派生して誕生した作品)でした。最後に中高生スカウトは、絵本と劇を見た参加者に、「困っている友だちに、何ができるだろうか」と呼びかけていました。参加者は、できると思うことを付箋紙に書いてホワイトボードに貼っていきました。ボード一面に貼られたメッセージを見てみると、「募金をする」という答えが多かったですが、中には「今の自分の生活に感謝する」「無駄遣いをしない」というような感想もありました。また「となりにすわる」と書かれた紙には、なぜか心が留まりました。

「考えてみよう、困っている友だちのことを」というテーマで過ごしたこの一日が、スカウトたちの心の直感に響きますように。

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