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教会誌「こころ」巻頭言
Kokoro
2018年 7月 1日(日曜日)

オキナワスズメウリ

教会誌「こころ」2018年7月号より

 

主任司祭 パウロ三木 稲川圭三

 

2年程前でしたか、仕事の関係で女子パウロ会の編集をなさっている女性とお会いする機会がありました。その時、シスターが乃木坂の修道院の花壇で作っているという「オキナワスズメウリ」という植物の話になりました。蔓性の植物で、秋になると直径2cmくらいの真っ赤なまんまるの実がなるというのです。「びっくりするくらいかわいい」というので、早速ネットで調べて見ました。確かに、びっくりするくらいかわいい実の画像がたくさん出てきました。「春になったら植えてみよう」と思っていましたが、昨年は2月から7月まで司祭館のリフォームでしたので、残念ながら聖堂脇の花壇は工事のために塞がっていましたし、また育てる余裕もありませんでした。

昨年の暮れに、クリスマスカードと一緒に、女子パウロ会の修道院の庭に出来たものなのでしょう、オキナワスズメウリの実を7つばかりプレゼントにいただきました。それはまだ熟していない濃い緑色の実でした。実の表面には、白い数本の縦しまがあって、それがまるで子どもがホワイトペンで「手描き」したかのような、不均一な頼りない線なのです。もう、笑ってしまうくらいかわいいまんまるの実でした。熟すと真っ赤になるというので、木のトレイに載せて食堂のテーブルの上に置いておきました。キュウリの緑色に近いくらいの濃い緑の実が、「はて、本当に、真っ赤になど、なるものなのか・・・」はなはだ信じ難い思いでしたが、食事をするテーブルの隅に置いたトレイに、日々目をやっていました。2週間位しても何の変化もないので、緑色のまま萎んでしまうのではないかと思っていましたら、個体差があるのでしょうか、一つの実の緑色がちょっと褪めてきたかなと思うと、どんどん褪色が進み、なんとなく全体が透明感を帯びてきて、ピクルスの緑のような黄がかった感じになってきました。そこからは変色の速度が早まり、みるみるうちに黄からオレンジ、そして赤へと色を変えていきました。その赤色というのは、ミニトマトの赤とはちょっと違った赤色で、どちらかと言うと二十日大根(ラディッシュ)に近い赤でした。一体どうしてあの濃い緑が、こんな華やかな赤になるのか? 自分はその経緯をずっと見ていたにも関わらず、やっぱり不思議でした。色の変化としては赤が最終形で、そのあと実は萎んで次第に褐色になっていきました。

オキナワという名前からもわかるように、高い気温を好む植物だということで、だいぶ気温が上がってきたので、今年こそは育ててみようと決めました。種から育てる自信がなかったので、苗を6つ購入しました。ホームセンターで14l入りのプランターを3つ、そして14l入りの土の袋を3つ(ぴったりのものが用意されています。便利ですね)買ってきました。5月30日(水)、曇り空でしたが、雨は降っていなかったので、プランターに土を入れ、そして軽く土を掘って苗を2つずつ植えて、たっぷり水をやって、それで完了です。植えた場所ですが、聖堂の外左側を、幼稚園の藤棚よりももっと奥に進んでいきますと、右手の花壇の一番奥にプランターが三 つ並んでいます。そこにオキナワスズメウリの苗を植えました。よかったら御覧になって「ちゃんと実をつけてね」と声をかけてあげてください。小学校の理科の観察ではないのですが、植えた日に苗の長さを計ってみましたら、36cmありました。2日後にもう一度計ってみましたら47cmになっていました。これは大変。こんな速度で伸びるのでは・・・、急いでネットを張ってやらないと、地面にぐちゃぐちゃに這ってしまうことになります。東日本大震災の年に「省エネ対策」で、軒下に盛んに作られた「グリーンカーテン」用の網を買ってきて、聖堂の窓枠からプランターまで、斜めに網を張ってやりました。苗はすくすくと育ち、わずか2週間ほどでわたくしの背丈に追いつく勢いです。蔓植物にもいろいろあって、朝顔のように蔓本体を支柱に巻き付けて伸びていくものもありますが、オキナワスズメウリは「巻きひげ」というものを伸ばして本体を支えていきます。「巻きひげ」と言いますが、最初は巻いていません。昆虫の触角のように、苗の先端から伸びた細いひげが、何かをつかもうと手を伸ばしている感じです。それが何か掴まるものに触れると先端が巻きつき、それと同時にひげが、らせん状にねじれを生じさせて、オキナワスズメウリの茎本体を引き寄せます。らせん状になった巻きひげは、バネのように緩やかに動いて、上へ上へと伸びていく茎本体を固定する役割を果たしているようです。昨日まで、すーっと伸びていただけのひげが、今日は何かを掴んでバネのようにくるくると巻いたような状態になっています。「巻きひげ」とはよく言ったものです。そしてその成長はかなり速いのです。

さてその巻きひげですが、一体「右巻き」なのかな、「左巻き」なのかなと思って、じーっと見ながら、巻きひげに合わせて自分の指先を動かしておりますと、「ん?」・・・「右巻き」のものもあれば、「左巻き」のものもあるのです。(いやいや、絶対に何かきまりや習性があるはずだ)と思い、更に調べておりますと「ええっ?!」と声を出してしまうくらい、ビックリしたことがありました。それは「右巻き」の巻きひげが、途中から「左巻き」になっていたということです。写真の中央下に写っております巻きひげは、見えづらいかもしれませんが、右→左方向で見ていきますと、最初は左巻きですが、途中から右巻きになっているのがわかります。このように途中で向きが反転していれば、風などで引っぱられた場合も、ねじれてちぎれることが少ない、ということなのでしょう。・・・一体、この巻きひげの途中から、巻きの向きを変えるように誰が教えたのか? まったく驚き、あきれるばかりです。

年間第11主日の福音でイエスさまは言っておられます。

「神の国は次のようなものである。人が土に種を蒔いて、夜昼、寝起きしているうちに、種は芽を出して成長するが、どうしてそうなるのか、その人は知らない。 土はひとりでに実を結ばせるのであり、まず茎、次に穂、そしてその穂には豊かな実ができる。実が熟すと、早速、鎌を入れる。収穫の時が来たからである」(マルコ 4・26〜29)

どうしてそうなるのか、わたしたちは本当に知りません。でもそのように成長させてくださる方に信頼して種を蒔きます。どうしてそうなるのか「知らなく」ても、そのように成長させてくださることを「知っている」ので信頼して委ねます。「神の国」とは、そのように成長させてくださる、「神さまのはからい」のことなのだよと、イエスさまは教えておられるのです。本当のところ、わたくしたち自身について考えてみても、どうして心臓が動くのかさえ、知りません。知らなくても、生かしてくださる神さまを知っているので信頼して今日を生きていきます。

オキナワスズメウリを今日も見ていて気付いたことがありました。茎から葉っぱが15cmおきくらいに出ています。そしてそこから茎が二つに分かれています。そしてそこから巻きひげも出ています。巻きひげの先端は、二つに分かれてダブルで何かを掴む仕組みになっています。どうしてそうなるのか、わたしたちは本当に知りません。

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