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教会誌「こころ」巻頭言
Kokoro
2018年 11月 4日(日曜日)

神さまにしていただいて「ありがとう」ということ、何かある?

教会誌「こころ」2018年11月号より

 

主任司祭 パウロ三木 稲川圭三

 

みこころ幼稚園の年長さんに、聖堂で月に一回、15分くらいのお話しをしています。9時45分からですが、少し前に香部屋(ミサの準備をする部屋、祭壇の裏側にあります)に行き、聖堂につながっている扉を開くと、子どもたちの歌声やお祈りの声が聞こえてきます。最後にもう一曲歌が歌われると、わたくしの出番になります。祭壇の裏から出てきて、子どもたちの前に立ち、一人ひとりの顔をじーっと見ていきます。そうすると必ずみんな、「あはははは」と笑い出します。ひとしきり笑ってもらって、その後、「みこころ幼稚園の良い子のみなさん、おはようございます」というと「おはようございます!」という元気な声が返ってきます。今日は、先日子どもたちとやり取りしたようすを聞いていただくことにしました。子どもたちのことばは、区別するために「かぎ括弧」に入れました。説明のために後から加えたことばは-以下で示しました。

10月に入りましたね。園庭にはいると、いい香りがするの知っていますか?
「キンモクセイ?」
ああ、知っていますね。金木犀というお花です。9月の終わりくらいから、毎年二週間くらいかねえ、またこの季節がやってきたなあと思います。でも、だいだい色の花は二週間くらいしたら落ちてしまうかな。あの、いつもこの時期になると、この香りがするので、この季節がやってきたなあと、神父さんは思います。
-と言うと男の子たちは首を大きく縦に振りながら
「思う」「思っちゃう」
-と、合いの手を入れて来ます。女の子たちはまじめにわたくしのことばに
「はい」
-と答えていました。

今日はね、皆さんに聞いてみたいことがあります。みなさんは、神さまにしていただいて「ありがとう」ということが何かあります? 神さまに、何かしていただいて「ありがとう!」ということが何かある?
-するとすぐに
「ある」
-と言って複数の子どもたちが手を挙げました。
あなたは何がある? どういうこと?
-そう尋ねると、女の子が小さい声で言いました。
「あの、神さまがいつもいつも、こころに一緒に見ていてくださってありがとう」
ああ、そうなんだ。はい、ではあなた。(男の子でした)
「神さま、えーと、早起きかな、早起き。神さまが起こしてくれてありがとう」
そうだねえ、そうだねえ。
「神さま、いつもみんなを平和にしてくれてありがとう」
みんなを平和にしてくれてありがとう、本当にそうだね。あなた。
「神さま、みこころ幼稚園に、連れてきてくれてありがとう」
ああ、ありがとう、ありがとう。ああ、たくさん手が挙がっていて、みんな指せない・・・ごめんね。じゃああなた。
「ずーっとぼくたちが幼稚園にいた時、付き合ってくれてありがとう」
付き合ってくれてありがとう・・・、本当にそうだね。一緒にいてくださるっていうことだね。女の子〜今度は女の子。
「ごはんを作ってくれてありがとう」
-すると回りの男の子が(それはお母さんだよ)と言っていました。ありがとうね。あ、ごはんを作ってくれてありがとう。もう、みなさんに全員聞きたいのだけれど・・・(聞けない、と思ったけど、やめて)聞く。聞きます。
「お野菜を作ってくれてありがとう」
「ごはんを作ってくれてありがとう」
-(さっきと同じ)と回りの男の子が言いました。
「いつも見守ってくれてありがとう」
あなた、手が挙がっている?
「おもちゃがなくなった時に、神さまが一緒に探してくれた」
ああ、それは本当にありがとうだね。そうだね。ええとあなた。
「お家を作ってくれてありがとう」
-すると(お家・・・は人でしょう)(お家は大工さん)などという声が聞こえてきました。これも男の子たちです。
「ごはんを、作ってくれてありがとう」
そうだね、そうだね、じゃあ、あなた最後ね。
「地球を作ってくれてありがとう」
ああ、そうですね。みなさん、たくさん教えてくれてありがとう。

神父さんもたくさんあるんだけれど、
-と言うと一番前に座っていた男の子が
「一つだけ教えてくれる?」
-と言いました。それで一個だけ、一個だけ、一個だけ、神父さんは、え~と、
「迷ってるの?」
たくさんあるんだけどね、一番最近の出来事で、そこの坂の上に、まいばすけっと、っていう店があって
「知ってる」「知ってる」
その坂の上に、角にコンビニがあって
「セブンイレブンでしょう?」
そう、コンビニの先に教会があって、そっちに向かって歩いていたら、そうねえ、20代くらいの若い男の人が、右足かな、足の裏に板が入っているのかな、その上を包帯でぐるぐる巻きにして、足を引きずりながら、何か袋を持って、歩いていたのね。壁づたいに、ケンケンするようにして、駐車場の金属の棒みたいなの知ってる? 鎖がかかって、
「うん、知ってる」
それにつかまりながら歩いていたので、(これ、家まで帰れるのかなあ?)と思って、一度神父さんは通りすぎたのだけれど、後を振り向くと、若い人ね、大丈夫かなと思って、
「本当にあったことなの?」
もちろん、もちろん。あの、「肩をかしましょうか?」と言ったら、その人は、「いいです、いいです」と(全力で両手を振りながら、結構ですと身振りで示して)言いました。いや、そりゃあね、知らないおじさんが「肩貸しましょうか」と言ってきたら「いいです、いいです、いいです」と言うでしょう。神父さんは「そうですか」と言って、また歩き続けたのですが、でも、神父さんが「肩貸しましょうか」と言ったのは、自分の中に一緒に
「神さま?」
そうそう、一緒にいてくださる神さまがそうしてくださったと思ったかな。
-というと男の子たちが
「おー」
-と言っていました。その「おー」は、天晴れ(あっぱれ)、あるいは、なるほど、というニュアンスのような「おー」だったように思います。神父さんの話は以上なのだけど、きっとみんなもお友だちに親切にしたりした時、みんなの中で神さまが、あの「付き合って」くださっているから、いつもね。いつも一緒にいてくださるからね。ごはんを作ってくださるお母さんもね、家を建ててくださる大工さんも、みんな神さまが、みなさんの中でよい働きをしてくださっているからね。そのことを感謝してください。

神父さんのお話は、そんな話しかな。神父さんのお話しはおしまいです。
「ありがとうございました」
-みんなが口々に言っていたことばをまとめるように先生が
「全員立ちます。ありがとうございました」
「ありがとうございました」
どういたしまして。
-と言って祭壇裏の香部屋の方に引き上げていくと、後から
「センキュー」「センキュー」
-と声がします。男の子たちの声です。まだピンマイクがつながっていたので、ウェルカム
-と言うと
「バイバイ」「ありがとうございました」「じゃあね〜」
-という声が返ってきました。

子どもたちは、神さまがごはんを作ってくれたり、朝起こしてくれたり、おもちゃを一緒にさがしてくれたりして、「ありがとう」と思っているみたいですね。ごはんを作ってくれたり、朝起こしてくれたり、おもちゃを一緒にさがしてくれたりしたのは、お母さん、お父さんであったかもしれません。でも、子どもたちはお父さん、お母さんの中に生きておられる神さまのことを、大人よりもよくわかっているではないかなと思いました。

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