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教会誌「こころ」巻頭言
Kokoro
2020年 4月 5日(日曜日)

霊と真理をもって礼拝しなければならない(ヨハネ4・24)

教会誌「こころ」2020年4月号より
主任司祭 ルカ 江部純一

新型コロナウィルスによる感染症がわたしたちの日常生活を脅かしている。公開しないミサというのは本来のミサの姿ではないことは言うまでもないが、教会が主日のミサを中止せざるを得ないというのは、やはり異常事態である。この状況にどう立ち向かっていけばいいのか。

今年(典礼暦年A年)の四旬節のミサは、洗礼志願者の準備のためにふさしい朗読箇所が選ばれている。特に第三主日(生けるいのちの水)、第四主日(生まれつきの盲人のいやし)、第五主日(ラザロを生き返らせる)に明らかである。この原稿を書いている今(3月15日)は第三主日、イエスとサマリアの婦人との対話が読まれる(ヨハネ4・5-42)。ヨハネ福音書には「水」をテーマにした箇所がたくさんある。「水がよいぶどう酒に変えられる」(ヨハネ2・7以下)、「水と霊によって新たに生まれる」(ヨハネ3章)、きょうの箇所「いのちの水」、「信じる者は、その人の内から生きた水が流れ出る」(ヨハネ7・38)、そして十字架上のイエスの脇腹から「血と水が流れ出た」(ヨハネ19・34)と続く。水は人を洗い清め、洗礼の時に与えられる聖霊はわたしたちを清める。「水」というシンボルをもって、ヨハネ福音書は洗礼志願者を洗礼から始まる入信の秘跡へと導いているかのようだ。

イエスはサマリアの女に「水を飲ませてください」と頼んだ。ユダヤ人はサマリア人の礼拝(宗教)を認めず、エルサレム(神殿)を中心とした礼拝から排除した。そればかりではない。異邦人扱いされたサマリア人に接することは汚れるという認識さえもっていた。イエスが女性と、しかもサマリアの女とこのような対話をしたということ、そのこと自体が大きな意味を持つ。イエスはだれをも差別・排除されない。しかも「わたしが与える水はその人の内で泉となり、永遠の命に至る水がわき出る」と言われる。「疲れた者、重荷を負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい。」(マタイ11・28)と招かれる。

3月11日東日本大震災から9年目を迎え、教区でも宣教協力体でも予定されていた死者の追悼と被災者のため、また復興を願ったミサをともに献げることができなかった。残念である。そんな中での新型コロナウィルス禍である。世の中の風潮にアジア人(特に中国)や外国人を遠ざけ、排除しようとする動きを見る。また未だに放射能汚染によって故郷に戻れない人々が大勢いる中で、排除と差別が表立たない部分をも含めて続いている。江戸文化研究者 田中優子さん(法政大学総長)は、安政5年(1858年)の夏の大雨・洪水に続いて、秋の江戸のコレラ騒ぎ、大火のことに触れている。「そのような中で、その日暮らしの貧民へ白米の分配が行われた。米価の高騰とコレラの流行故だという。福島の原子力発電所の事故でも今回の新型コロナウィルスでも、市民による排除と差別が目につくが、江戸時代にはそういう記述は見当たらない。」と述べている(「毎日新聞」3月11日付夕刊)。このような災禍を乗り越え、協力し合ってきた先人たちの思いや行動が目に浮かぶ。

教会報「こころ」2月・3月の巻頭言は、予定されていた黙想会(3月15日)につながるような記事を書いてきた。そこから次のような黙想会の内容を考えていた。

1. 現状認識・目標(教皇の訪日メッセージなどから)
①人のいのちを脅かす現代社会のあり方
・孤独、絶望、孤立。自殺者、いじめ、自分を責める等々
・効率、生産性、成功⇔無償の愛、無私の生き方
・だれもが幸福で充実した生活をすることができる社会・文化
②回勅「ラウダート・シ」との関連
・軍備拡張に反対する声を上げる努力は常に必要
・貴重な資源の無駄遣い、自然環境の保全のために
・人間らしい生活を奪われている人々に対する支援
③与えられた現実、いのちを喜びのうちに認め(恵み)、分かち合い、祝い合い、交わる「わたしたち」を作り上げていくこと

2. 現代社会のありさまを見る
①資料 2016年待降節第一主日「聖書と典礼」7頁気がつく 目覚めている 意識
②TVBS1(3月1日再放送)IPCC(Intergovermental Panel on Climate Change)
副議長ヨウバ・ソコナ氏 特別報告書からの警告 世界気候クライシス

3. 人とのつながり・交わり

4. 結び

東日本大震災被災者の証言から すべてのいのちを守り、見つめ、前へと

ここに詳細を記すわけにはいかないので、機会があるたびにいろいろな形で触れていくつもりである。

最後に、教皇訪日の折の被災者の証言から引用する。「この震災を通して、失くしたもの以上に与えられたものがたくさんありました。世界中の多くの人たちが心を寄せてくださり、人と人とのつながりで助け合って生きていく姿に希望を持つことができました。八年過ぎて、ようやくあのときの前と後を少しずつつなげて考えるようになりました。何が大事で、何を守らなければならないか。何もしなければゼロだけど、一歩踏み出せば一歩分だけ前へ進むこと。昨日の続きの今日が重なって、その先の明日へつながっていくことが当たり前ではないことを知らされ、いのちがいちばん大事で、失くしてよいいのちなどないこと。」(加藤敏子さん)

今、世界中を混乱させている感染症という脅威を少しでも退け、現状に負けずに歩んでいくために、皆の祈りを結び合わせ、今こそ「霊と真理とをもって礼拝」することができるよう心から願い祈り求めるものである。

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