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教会誌「こころ」巻頭言
Kokoro
2019年 11月 3日(日曜日)

フランシスコ教皇訪日の意味

教会誌「こころ」2019年11月号より
主任司祭 ルカ 江部純一

教皇様の訪日が発表され、各メディアで話題となっている。もちろん日本の教会でも歓迎準備のために多くの人々がかかわっている。おそらく多くの方々が東京ドームで行われるミサに応募されたと思うが、教皇の日本での日程をもう一度確かめてみていただきたい。カトリック中央協議会のウェブサイトには、今回の来日のテーマが掲載されている。

すべてのいのちを守るため ~ PROTECT ALL LIFE ~
教皇フランシスコ来日のテーマは、同教皇の回勅『ラウダート・シ』(2015年発表)巻末に収められている「被造物とともにささげるキリスト者の祈り」から取られています。わたしたち一人ひとりは、神の似姿としていのちを与えられ、すべての人とともに永遠の祖国を目指すよう導かれています。そしてこの世界も、神によって「人の住む所として形づくられ」(イザヤ45・18)、保たれています。ですから、「すべてのいのちを守るためには、人間一人ひとりの尊厳はもちろんのこと、環境も大切にされなければなりません。しかし、「わたしたち皆がともに暮らす家」である地球は、人間の手によって蹂躙されて苦しみ、そのうめく声は、世界中のうち捨てられた人々の嘆きと重なっています。今日の日本にも、いのちと平和に関する諸問題が山積しています。経済、環境、近隣諸国との関係といった問題のほか、大規模な天災や原発事故からの復興も、持続的な課題として存在しています。わたしたち日本の教会は、あらゆるいのちを守り、人間の生の諸問題に真摯に取り組むべく努めています。キリストが示されたいのちの福音を告げ知らせ、キリストによる平和のために祈り働くその決意を、教皇来日のテーマは表しています。

長崎では核兵器に関するメッセージを、広島では平和についての集会が行われる。またバチカン発表の公式スケジュールでは、東京ドームでミサが行われる日の最初の日程は「Meeting with the victims of Triple Disaster」(三重の被災者)とあるように、特に福島第一原発での被災者・避難者との会見が行われる。伝え聞くところによると、教皇ご自身は福島にも訪問を希望されていたとの由。それは叶わなかったが、この二日間だけでも教皇が最も大切にされていることがよく表れている。就任の際に述べられたことば「『貧しい人のための貧しい教会』となることをどれほどわたしは望んでいることでしょう!」を、日本でも(おそらく前の訪問地タイでも)はっきりと示すためである。

「毎日新聞10月7日付朝刊」にも「フランシスコ法王、来日に寄せて 核時代に懸ける人類生存の橋」と題して、本間照光さん(青山学院大学名誉教授)が寄稿している。その中で本間さんは述べる。

「今、「金銭という神」の下で、この国でも内なる大もとは放置される。矛先は弱者と外へ向けられ、対外紛争、戦争、核戦争へのハードルは低くなる。フランシスコ法王と信仰を求めるすべての人に訴えたい。平和アピールが呼びかける「人類滅亡」、宗教の滅亡の危機回避を、今にどうつなぐか。日本政府と世界の政治指導者に求める。「『核の傘』ではなく、『非核の傘』となる」(長崎平和宣言、2019年8月9日)ことを。「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」(日本国憲法)。これは「戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認」(同9条)へと続く。法王が見ているのも同じ方向だ。これを国の内外に共有してこそ、各時代に人類生存の橋が懸けられる。」

東日本大震災の被災者、打ち続く大雨・洪水による被災者、故無く人権を踏みにじられ力による支配によって時に死へと追いやられる多くの人たち、環境破壊によって生存が危ぶまれる多くの生物、核兵器による人類滅亡の危機、その中にわたしたち人類も含まれている。一人ひとりができることはまだある。生活は向上したが、人とのつながりはかつてないほどに脆くなっている。社会の底辺や外に追いやってしまっているのは他のだれでもない、一人ひとりが生活=信仰の中で気づき、共感し、心を動かす共感の力、ともに生きる力と想像力に目覚め寄り添っていくこと。そこまで教皇はわたしたちに呼びかけているのである。

東京で行われる青年の集いやミサを、単にお祭騒ぎで終わらせることなく、教皇の思いに応え、神の望まれる平和と平等の社会が実現するよう、心から祈り願いもとめたい。

お薦めの本
「教皇フランシスコがあなたに知ってほしい10のこと」(女子パウロ会)
「教皇フランシスコが家庭についてあなたに知ってほしい10のこと」(女子パウロ会)
「使徒的勧告 福音の喜び」(カトリック中央協議会)
「回勅 ラウダート・シ ともに暮らす家を大切に」(カトリック中央協議会)
森 一弘「教皇フランシスコ -教会の変革と現代世界への挑戦-」(女子パウロ会)

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